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「おい君!馬鹿は陸にあがってから言いなさい! そもそもヒゲ中将から君らを無事に日本へ連れて行くよう頼まれたから、この船はキランの駆逐艦から必死で逃げている。大人しく船底に隠れていなさい」
船長は頑張る気ではあるが、如何せん斥力船と石炭船との競争である。
船長が立ち上がった時には、駆逐艦は楽々と貨物船と並走する形になり、砲塔は真横を向いている。
《ザ──ッ、貨物船の船長に告ぐ、そちらに上等な異能体が乗っている事を、こちらは把握している。速やかに停船されたし。次は当てる。警告はこれまでである。以後は無い》
「本気で当てに来ますかねぇ?」
ハナマ・ハーに向かってアズ。
「私が駆逐艦の艦長なら、逃がすんだったら沈めるね」
貨物船の船長に向かってハナマ・ハー。
艦橋から見える駆逐艦は、砲口を此方に向けたまま、ズイズイズイと近付いて来る。
「船長さん。お気遣い本当にありがとうございます。けれども大丈夫です。僕にはラムダがついています。そして、こんな所じゃ止まれない」
アズがグイグイと顔を近付けたから、船長は大く息を吐いて、機関室への内線電話を手にとった。
「減速始め‥」
煙突からの黒煙は、モクモクモクモク西へ流れて行く。
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