東京へ

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貨物船の後ろ半分はヘリ甲板である。 駆逐艦から飛び立ったヘリコプターがバラバラと音をたてて着艦する。 「ずいぶんと年季の入った斥力だからね」 アズがツナギのポケットに手を入れて歩きだした。 「サフス軍もキラン軍も、どうして貴重な穀物燃料を無駄に燃やすのかしら?」 〈世界のワガママ〉以降、世界の人口に対しての耕作地面積は絶対的に少ない。 シオンが憤慨しているのは、その点である。 甲板に風を押しつけているヘリコプターから降りて来たのは、先ずは痩せた灰色の軍服。続いて降りて来たのがヨレヨレの軍服。 「ずいぶんと年季の入ったF体だから‥」 ヨレヨレの灰色軍服は白髪混じり。アズはその人を見てまた言った。 ──F体。 第1物質クリルを溶かした溶液に毎日浸かる。それで思考波を操れるようになった異能体を人々はそう呼ぶ。 体に無理を強いるから、F体がF体であり続けるのは20年が限界とされている。 痩せた軍服が、アズの後ろにいるハナマ・ハーに敬礼をする。 職業柄、ハナマ・ハーの軍人の臭いを嗅ぎ取ったらしい。 キラン陸軍の元大佐は敬礼を返し、そのやり取りに興味を示さないヨレヨレの白髪混じりはツカツカとアズとシオンの前のに進んだ。 「ほうほう、強い思考波の出処は2人だったわけだ。ラムダの臭いまでプンプンするのぉ」 (年季の入った思考波はラムダを知っている!) アズは口をへの字に曲げた。
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