東京へ

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船底に、第1物質クリルを塗り込んだ斥力船サザランド。排水量2000tの船である。 建造されて20年であるが、船足が速いため、この北の海に派遣されたようだ。 船の大きさに比例して艦長室も狭いのであるが、キラン組4人とサザランド艦長テト・ハーネメイ、それから彼の秘書官である若い女性下士官が座れる広さのテーブルはある。 「私達は軍司令部の指示により貴方がたに質問を行うわけですが、貴方がたには黙秘権の行使が認められています。希望があれば、少々時間は掛かりますが、弁護士をつける事も可能です」 「おいおい、のっけから犯罪者のような扱いじゃないか?」 ハナマ・ハーはサフスの言葉に堪能であるから、女性下士官が無表情で読み上げるサフス海軍法規書の文面にちゃちを入れた。 「あのですね‥」 突然の発言はシオンである。 「どうして軍人さん達は、穀物燃料を無駄遣いして平気で居られるんですか? 世界にはお腹を空かせた人々が、まだ沢山いるというのに!」 ヘリコプターを見た時からの不満が、堰を切ったようだ。 ナチュラルへの尋問は、こうして始まったのであるが、広くもない艦長室には、様々な思惑がぐじゃぐじゃしている。
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