東京へ

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「お嬢さん。これは私の自論なんだがね、私達人類は、ゆっくりと昔へ帰って行かねばならないのだよ。分かるかい?」 「へ?」 テト・ハーネメイの返答の意味が、シオンにはてんで分からない。 「お嬢さん、化石燃料って言葉は知っているだろう?」 「石炭‥それから石油‥」 「そう。21世紀の中ほどまで、人類の文明を支えたエネルギーの源だ」 地熱、水力、ソーラー。自然エネルギーの利用は勿論進化を遂げていたのだが、化石燃料の枯渇が叫れても暫くは、文明のギアは高回転を止める事はなかった。 高回転を続ける為には莫大なエネルギーが必要であり、文明の回転速度を下げるためには、大きな精神的苦痛を受け入れなければならない。 マイカー、エアコン、毎日のシャワー。 例えるなら、それ等のエネルギー消費を個人個人で抑えるには、無理がある。 世界が残り僅かとなった化石燃料を、ペロリと使いきった理由がそれである。 「世界が保有している軍事力。エネルギーを消費させているのはね、軍人ではなくて、軍事力なのだよ」 突然の哲学じみた話である。 大人達は何かを考えているふうであるが、アズとシオンは目をパチクリさせているだけである。
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