東京へ

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「ハナマさん! 斥力砲〈スカラ〉って何なんです! それは父さんの記憶にも無い。キランはそれで何をしようと言うんです。僕とシオンは〈ガギガギの塔〉を目指しているだけじゃ駄目なんじゃないですか?」 アズは椅子を倒して立ち上がり、渋面のハナマにテト・ハーネメイは満足した。 「ガギガギの塔‥‥それはサフスタワーの事かい?」 ハーネメイのその問いには、息の荒くなったアズに代わって、シオンが答えた。 「そうです。父の日記に書いてあったんです。私とアズの父親は、まだ独身の時にサフスタワーの建設現場を見学する機会がありました。ただでさえ酸素濃度の薄い高い山の上に建てられる塔。ボンベを担いで作業にあたる作業員。皆、貧しい土地から連れられて来た言葉の通じない人達です。まだキランタワーがあった時です。建設競争のただ中にいた指揮官達は、重労働に悲鳴を上げる作業員に、更なる悲鳴を求めたそうです。工事が進むと、指揮官達の報酬は上がり、ズルい指揮官の何人かは、作業員の給料の上前まではねる。作業員の悲鳴に指揮官達の舌なめずりの音が交わる。それが私とアズの父親の心にはガギガギガギガギと音を立てて響いた」 「ふうん‥でも変だね。ただの見学者に、何故そこまで分かる?」 「艦長さん、それは───」 「アズ君! 駄目だ!」 「父さん達も、上等な異能体たったからさ!」 駆逐艦サザランドの船首が高く上がった。そしてサフス海軍は、ナチュラル2人の拘束理由を得た。
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