斥力じいと記者さんとラムダキー

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むしゃ‥むしゃ‥むしゃ‥ アズはチラリと斥力じいを見て、驚きを飲み込む為に咀嚼を再開した。 F体は、毎日毎日こんな事を繰り返している。体が無事である方がおかしい。 「特例の本当の理由はそこか‥」 キランのF体が、軍に入隊して10年後に行使できる権利のことである。 「少年よ、それは若い世代のF体の話だ。我々鉱夫上がりは、クリルに声を掛けられて思考波を使えるようになった。だから今の者とは、少々ワケが違う」 斥力じいは他人事のようにブクブクブク。 「ところでメロウナさん。斥力砲〈スカラ〉について聞きたいんですけど」 メロウナ・チューリップ。サフスタイムズに入社して15年である。〈世界のワガママ〉が何故起きて、斥力が世界を何処に導くのかを書き続けている。 「アズ君。新聞記者が頑張って取材したネタを、そう簡単に喋れると思うかい?」 右手に持ったペンの頭で、銀縁メガネのずれをなおす。 「斥力砲ならなんと無く分かります。このブレスレット、死んだ父さんの記憶なんです」 「ふん?」 「ブクブク?」 アズとシオンの左手の銀色。 アズのブレスレットには父ユキヤの、シオンのブレスレットには父カンタロウの、断片ではあるが記憶そのものが埋め込まれている。 「僕とシオンは本気です」
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