斥力じいと記者さんとラムダキー

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「なるほどね。だんだんと見えてきたよ。君達は〈新月号〉のクルーの子供だったんだね」 パイプ製のベッドから降りたメロウナ。 開いたままの手帳をアズに渡すと、部屋の隅にある茶色の鞄の口を開けた。 「メロウナさん、残念だけどサフスの文字は読めない‥‥」 「噂のナチュラルでも、それは駄目なんだ。意外と言ったら意外だね」 ガサガサガサガサ。 古いノートをかき分けながら、記者さんは少しだけ笑う。 「大地が至る所でひっくり返った後、キラン軍が始めた事はね、シャルネ砂漠のど真ん中に、巨大な大砲を造る事だったんだ。砲弾の中にギッシリとクリルを詰め込んで、砲身の仰角を目一杯上げてズドン。砲弾の軌道上に予め飛ばしておいたブレーンシップの幾つかから、F体がリレーのように思考波を送る」 「そんな! 人工衛星を落として、沢山沢山大地をひっくり返しておいて、まだそんな物を造ったの?」 「あ、あった」 メロウナ・チューリップは、ボロボロの古いノートを手に取った。 「太陽の翼計画。新月号クルー。柳雪也、谷口貫太郎。ところでアズ君、キランが落としたのはただの人工衛星じゃないんだよ」 それを言うと、メロウナ・チューリップは古いノートを閉じた。 「じ、人工衛星じゃなきゃ、何だったんですか!」 「太陽の翼計画、第2次帰還船さ」 ブクブクブク 斥力じいが目を閉じた。
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