斥力じいと記者さんとラムダキー

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「メロウナさんありがとう。何だかぐちゃぐちゃしたものがまとまってきた。斥力じいもありがとう。本当は、バッチリと僕達を見張らなくちゃならない筈なのに」 ブクブクと、ずっと水槽の中に居た年季の入った異能体が動いた。 透明の液体からバサリと頭を出し、ワサワサと顔を左右に振った。 「ヤナギ・アズじゃったな。ナチュラルをF体が見張れるワケが無い。で、これからどうするつもりだ?」 白髪だらけのF体。 水槽の縁に顎を乗せ、小さく丸い目を大きくさせている。 「ブレスレットはさ、僕とシオンにガギガギの塔を倒す事しか求めてはいないんだ。けれども何かが少しだけ違う気がして来た。だから、この船で東京へ行こうと思っていたけれど止める。時間が掛かり過ぎる。急がなくちゃ」 アズはツナギのポケットからラムダナイフを抜きとると、それでシオンの手首の鎖と足首の鎖を叩いた。 叩かれた鉄は、割れた硝子のように飛び散り、両手の自由を得た女の子は何をし出したかというと、左の手で豆料理の皿を持ち、右の手でスプーンをがっしり持って、ガツガツガツガツ食事を再開した。 食事を再開したのは少年も同じ。 「腹が空いては?」 「大事は成せない!」 ガツガツガツガツ。
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