斥力じいと記者さんとラムダキー

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「こら、お前たち。部屋から出ちゃいかん!」 狭い廊下にいたのは若い水兵2人。片方がアズに手を伸ばし、片方は銃を構えた。 「シオン!」 「行くわよ!」 アズを捕まえようとした水兵の手が空を切る。 「き、貴様!」 駆け出したアズを追い掛けようとした水兵であるが、彼の踏み出した革靴が踏んだのはサザランドの鉄の廊下ではない。 なだらかな起伏の続く、緑の草原の草花である。 「シオン。またそのイメージかよ!」 アズはシオンの手をとった。 そのまま狭い廊下を走り、鉄の階段を登った。 「アズ。ハナマさんは何処?」 「感じからすると、まだ艦長室に居る。僕はハナマさんを連れて来る。シオン、1人でヘリコプターイケる?」 階段の踊り場でシオンはアズの手を離し、代わりにポケットの中の銀色のセミオートマを握った。 片膝を踊り場に着きトリガーを引くと、乾いた火薬の音が艦内に響く。 シオンの撃ち出した弾丸が弾いたのは若い水兵の構えた銃であり、若い水兵の銃は彼の脳裏を占領する緑の草原の澄み切った青空を飛んだ。 ───「ひどいもんですね。アズ君かシオンちゃんの思考波でしょう? 完全に頭を支配されてる」 F体部屋のメロウナ・チューリップである。 斥力じいはというと、満足そうに、またブクブクブクブク水槽に沈んだ。
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