斥力じいと記者さんとラムダキー

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「何だこれは!」 脳裏に飛び込んで来た草原のイメージに驚き、サザランドの艦長室で立ち上がったのはテト・ハーネメイだけではない。女性秘書官もそうであるし、ハナマ・ハーもそうである。 退役したとはいえ、ハナマはテトよりも軍隊での階位が上であったから、サザランド艦長のサフス海軍中佐は、キラン特殊部隊ブラッカ解隊の経緯、斥力砲〈スカラ〉の詳細などをナチュラル2人を斥力部屋に押し込んだ後も、礼を失しない程度にダラダラとその自室で聞いていた。 思考波は思考波で弾くしかない。 テト・ハーネメイは、左耳の軍用イアーノウの赤い非常用ボタンを押した。 けれどもシオンの思考波は強く、テト・ハーネメイは草原の外へ足を踏み出す事が出来ない。 一方のハナマ・ハーは思考波のイメージに占拠されたとはいえ、草原の景色の向こうに、薄っすらと見える現実の光景にだけ、意識を集中する事ができた。 キラン最強と言われた部隊を作って来た男であるから、女性秘書官の上着の中に銃があるのは分かっていた。 幾度も幾度も、部下達と重ねて来た闇夜の訓練もここで活かされた。 勢い良くテーブルを飛び越え、女の上着の下へ手を入れた。 銃を掴んだのとほぼ同時に、彼の右足は、サザランド艦長の下腹を蹴り上げている。
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