斥力じいと記者さんとラムダキー

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サザランドを飛び立ったヘリは、心持ち頭を下げて飛ぶ。 「アズ君。さっき空母と言ったね」 「はい。最新鋭空母ベラレクス」 駆逐艦サザランドからは大分離れ た。 大分離れたという事は、サザランドの船員達を縛り付けていた草原のイメージも薄れたという事。 「ベラレクスは無理だろう」 「どうですかねぇ?」 「まるで他人事だな」 サザランドからヘリを追い掛けて来た物がある。 熱源追尾型の艦対空ミサイル3発である。 3人が乗ったヘリコプターは、穀物アルコールで飛ぶ。新物質とは無縁な代物であり、余程の幸運を得なければ、エンジンの熱について来る自動追尾型のミサイルは振り切れない。 「シオンちゃん。このままの高度を維持しながら左に切れ込んで行こう。アズ君はパネルのレーダーが赤のシグナルを発したらチャフを撃ち出して。大丈夫、逃げ切れるさ」 「逃げちゃマズイんですけどね」 右前方へ打ち出されたチャフ。 火薬で撒き散らされた鉄片の数々が、漸く雲間から顔を出した月に照らされる。
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