斥力じいと記者さんとラムダキー

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ラムダの思考波に乗った過去の記憶。 ベラレクスのいる海域のイメージ全ては、新月号の操縦桿を握る柳雪也のものである。 《ヤナギ・アズ! このイメージはお前が出しているのか?》 海面スレスレを黒煙に巻かれるヘリは飛び、大きく旋回を遂げたクロッカスのオメガがそれに並ぶ。 「父さんの記憶だ。僕とシオンは、それぞれの父親から太陽の翼計画の完遂を託された。クロッカス、君の言う通り、僕達はワガママだ。けれども譲れない。ガギガギの塔はガギガギだし、斥力砲スカラだってガギガギなんだ。それを止めようとする僕達が、大人しくやれる訳がない」 ザ───ツ ザ───ツ ザ───ツ 『新月号、帰還船の軌道を変えているのは、やはりキランの斥力砲だ。帰還船の軌道修正は何とかする。キランの斥力砲を黙らせてくれ!』 (無理だ、思考波で斥力の出処を探すのは容易い。けれども、どれ位時間が掛かる? 無理だ‥‥) 雪也の振り向いた先には、ひたすら計算を続ける貫太郎の顔がある。 『違う、東からじゃ駄目だ! ならば南‥‥このルートじゃ万が一の場合、宇宙に出るのが遅れる。ならば北か? あり得ない。どう飛んでも4時間は要る!」 (ふう‥‥) 前を向いた貫太郎は、メインパネルにそっと触れた後、ガッシと操縦桿を握った。 格納庫の巨大なシャッターは既に全開である。 操縦桿をやや引いて、右足のペダルを踏み込んだ。 雪也は無言である。 格納庫の煩瑣(はんさ)な物事は、ラムダの斥力で渦を巻く。
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