斥力じいと記者さんとラムダキー

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ベラレクスから飛び立った5機のローズマリーがおかしい。 ジャーンとガジャラを追った2機はフラフラと降下を始めて、アズを追った内の1機は、水切りの小石の様に波間で弾けた。 おそらくは、パイロットシートの後ろに座るF体のイメージがラムダの記憶にかき乱されているのだろうが、少しだけ、だらしが無い。 「シオン! ベラレクスの甲板の上! ベネネイがいる!」 アズが見付けたのは既出の、一線を退いた名機である。 「ゲホッ、ゲホッゲホッ。煙とか煙とか、もう無理! ベネネイ了解! 新鮮な空気を早くお願い!」 既にスクラップ状のヘリコプターである。 煙と火花を出しながら、惰性と斥力で飛んでいる。 ベラレクスの甲板まで800m‥600m‥400m‥ 《ヤナギ・アズ‥‥お前は馬鹿だな‥‥》 海面スレスレのスクラップを、オメガの脚がガギリと掴んだ。 ノーマルは異能体ほど思考波の影響を受けないから、ベラレクスからの機銃の連射は、あいも変わらずの吹き付ける雨。 200m‥‥100m‥‥ ダダダダダダダダダダ ガシャーン ギギギギギ ドゴ───ン 双胴のブレーンシップ オメガ。 翼長50mの質量は、ベラレクスの甲板を削りまくった末、その最後尾の非常用ネットで漸く止まった。 《ヤナギ・アズ》 「何?」 《中途半端は、認めんぞ》 「うん」
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