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ベラレクスの後部甲板で、翼を休めている旧式機ベネネイ。
機首の横にT200とあるから、おそらくは練習機なのであろう。
「動くの?」
「動かすさ」
ハナマ・ハーを乗せたオメガは既に飛び立ち、ベラレクスの長い甲板に沿って進んだ後、思い出したかのように引き返してその船の艦橋を掠めた。
ジャーン空挺団のイエロラ2機もそれに倣ったから、空母の乗組員の目と鼻は、空賊のブレーンシップをのみ追った。
ベネネイのタラップを登り、アズはキャノピーの下の穴にラムダナイフを刺す。
赤い光が少しだけこぼれると、サフスの旧式機は大人しくナチュラルの思考波に従う。
コクピットのディスプレイは鮮やかに目覚めて、少年と少女を迎え入れた。
「ひたすら真っ直ぐ」
アズはパイロットシートの上にあったヘルメットをかぶり、
「ひたすら真っ直ぐ。よろしくねT200」
シオンはコアシートに身を沈め、白い機体のコンピュータに話し掛けた。
[ヨロシク マスター]
白いベネネイはかなりの初期型らしい。新型機では姿を消した人格型ナビが生きている。
「君、名前は?」
アズが尋ねる。
[T200]
「ぷっ、そのままじゃん」
ベラレクスの波に洗われた後部甲板。
白いベネネイはフワリと浮いた。
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