ロブロの馬鹿

15/15

97人が本棚に入れています
本棚に追加
/300ページ
  アズが、翼の付け根の突起を掴んで湿った枯れ草の上に降りると、松の木の後ろから出て来たシオンが横に立った。 「チェッ」 軽い舌打ちで翼の放棄をシオンに知らせると、アズは翼の上のロブロ・ゼッタを見た。 「良いのか? ヤナギ」 「良いも何も、早く行きなよ。それから、ラムダナイフは貸しておくだけだから。返してもらいに行くから」 少佐も何かを考えるふう。 暫く黙ったあと、くるりと背中を見せた。 「その時には、約束通りこのローズマリーを君にやろう。グッドラック」 翼の陰に少佐が消えると、ローズマリーの二重の扉が閉まる音が聞こえた。 「少佐のパートナーはラムダを使えるの?」 「使えない方が変だよ」 「‥‥‥」 歩き出したアズは、怪訝そうに自分の顔を覗き込んでいるシオンの顔に、ニイフ・キーのイメージを重ねた。 「使えない方がおかしい‥」 鉄の匂いが濃くなり、枯葉は渦を巻き、銀色の翼はゆっくりと浮いた。 若干首を下にしたそれは、右に回転しながら高度をあげ、機首を上に向ける動作に移ると、今度は左回りを始める。 「大丈夫かしら?」 「大丈夫」 ローズマリーの躊躇うような回転が止まった。 そして深呼吸をしているかの様な少しの時間を使うと、西を目指して激しい加速を始めた。 「あ! バイクの鍵‥‥」 アズがそれに気が付いた時には、ローズマリーは小さな星に紛れてしまいもう見えない。  
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

97人が本棚に入れています
本棚に追加