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[アズ様、あなたも大分疲れているでしょう。シオン様とあなたの思考波はお強い。お2人でお眠りになられても、この機体は飛べます。少しお眠りなさい。東京は荒れていますから]
「うん──」
確かに疲れた。
アズはヘルメットを取り、パイロットシートの尻を前にずらして、脱いだそれを腹の上に置いた。
カシャリと音がした。
ツナギの胸ポケットの中、ラムダナイフに何かが触れている。
「あ‥‥」
ラムダナイフに触れているのは、クロッカスが投げたネックレスである。
第3物質が練り込まれている。
「クロッカス‥‥」
後ろのコアシートからは、シオンの微かな寝息が聞こえている。
アズも目を閉じて、手にした銀色のそれを額の上に載せた。
カシャ カシャ
機械類の小さな音が響き、アズの意識は深い別宇宙とのハザマに沈んで行く。
(何だ? やけに明るいじゃないか‥あそこに立っているのは、父さんとシオンのお父さんじゃないか? 小さな子供‥シオンか? いや、紅い髪。シオンは栗色の髪‥‥)
クロッカスの首飾り。
ここにもヤナギ・ユキヤの記憶。
淡い疑問に包まれながらも、アズの意識は、深い深い処へ落ちて行く。
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