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アズはパイロットシートで跳ね起きた。意識の尻尾はまだ時空間を彷徨っている。
「T200! アデュム作戦って何さ!」
アズの指先は既に、自動飛行の解除ボタンを押している。
[アズ様、申し訳ありません。アデュム作戦のデータは私の中にはありません]
「焦るな焦るな焦るな! シオン、起きて」
「起きているわ! 焦らないでアズ!」
《ザ──ッ、応答が無ければ、こちらはベラレクスからの情報を元に、そちらを落とす。アデュム作戦にナチュラルは要らない》
「何!」
ディスプレイには漠然の接近を示すだけの漠然とした雲。
「アズ、南南西から強い斥力が2つ。遭遇まであと2分!」
「全くさぁ!」
アズは時間を稼ぐ為に、操縦桿を左に倒した。けれども強い斥力のイメージはグイグイと近付いて来る。
「T200! 少しだけでいい。アデュム作戦に関することを知らないのか?」
「アズ、あと1分。速いわ、アコーサの激しい斥力が2機!」
ベネネイは古い機体である。
ボディーもそれを留める金具もギシギシと鳴き出している。
[サフス議会は2つに割れています。サトゥーマ派とロブロ派です。サトゥーマ派は新物質を神として讃え、ロブロ派は新物質に頼らない世界を目指しています]
「ロブロ派?」
[あら、まさかアズ様はご存知ないので? ロブロ・ゼッタは次期議会長候補ですよ]
「アズ、距離3000!」
驚いている暇は無い。
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