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突き抜けた雲の隙間から見える太平洋の水平線。
それを赤い色に染めて、漸く朝陽が登ろうとしている。
真下には既に、本州の水平線があった。
洋上には2艘の貨物船が引く、白くて長い航跡。
「シオン、悪あがきはやめる。ひたすら東京を目指そう」
ディスプレイにはT200のはじき出した数字。5%
「アズの好きなようにするればいいわ」
それに頷いたアズは、足元の小さなハッチを開いて、ラムダナイフを放り込んだ。
ディスプレイの数字は少しだけ上がり15% おそらくは無事に東京まで辿り着ける確率なのであろう。
クリルの斥力にラムダの斥力を加えても、旧式の機体がどれだけ保つかである。
「水平線飛行に移る。その後緩やかに下降する」
ベネネイの翼がギシギシと音をたてる。
「20分。シャーイーに追い付かれるまでの時間。25分。東京湾に到達する時間」
ディスプレイの数字は15のまま変わらない。
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