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「柳小豆君。谷口詩音ちゃんだね」
それにどんな利便性があるのか、縦に開くスポーツカーのドアである。
左側にあるハンドルを握っているのは、黒いサングラスを掛けた40歳前後の皮のジャンパーの男。
「そうですけど?」
この状況を警戒するアズは、自分の後ろにシオンを隠した。
「柿丸だ。怪しい者じゃない。乗りな」
サングラスの男は、立てた親指で後部座席を指した。どう膝をたたんだら座れるのかと考えてしまう位、狭い空間である。
キラリと光る物がある。アズが空を仰ぐと、幾筋もの飛行機雲が東西それから南北を目指している。
「アデュム作戦が始まったからな。騒がしくなるぞ」
柿丸の言葉にアズは更に口を曲げた。
「君等2人の事はロブロ・ゼッタに頼まれた。流石にこの場所に居ちゃマズいだろ」
そう言いながら、柿丸はアズに向けて銀色を投げた。単発の400CCの鍵である。
「柿丸さん。ロブロ少佐のローズマリーは‥‥」
「ふん、柳先輩の息子。俺はラムダナイフまでは預かっちゃいないんだぜ。考えている暇があったら早く乗れ」
サングラスを外した柿丸。
プイと前を向いて、アズとは目を合わせない。
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