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「柿丸さん。父さんの事を先輩と呼び、日本人であるあなたが何故サフスの軍事位階を付けられて名を呼ばれるんです?」
車は再び走り出している。
埠頭から、その昔高速と呼ばれた道を20分も走れば、多少の小高い丘も見えて来る。
柿丸の車は広い道を捨て、今は人けの無い工場地帯の道を通り、やがて色褪せた商店街のアーケードをくぐった。
「あ! 友松屋の牛丼」
それまで黙っていたシオンだが、何かを思い出したらしい。思わず叫んだ。
「ともまつや‥友松屋‥‥あ! 友松屋」
柿丸はそのシャッターの降りた友松屋の前で車を止めた。
陽はもう、だいぶ高い場所で輝いている。
「この場所を漸く思い出すようじゃ、君等は知らない事の方が多いな」
商店街を抜けた先にある、紅葉を過ぎた木々に包まれた小高い丘。
4階建の白い建築物。
「太陽の翼計画構成員の宿舎だ」
柿丸快衣は何故だか笑っている。
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