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ガンガンガン
柿丸が友松屋のシャッターを叩く。
店の中からはカサゴソと物音。
ガラガラとシャッターは開けられ顔を出した坊主頭に八巻を巻いた親父は、少しだけ驚いた顔をした後、直ぐに弾ける様に笑った。
「快衣じゃないか! 馬鹿野郎! 東京に居ながらどうして何年も顔を出さない」
八巻の親父は怒りながら笑いながら柿丸の腕を掴んだ。
「ただ寄っただけとか言うんじゃ無いぞ。美味いモツ煮が出来ている。あ、松茸だ。昨日市場でどうにか仕入れた松茸もあるぞ!」
半ば無理矢理に柿丸を店内へ連れて行こうとする親父。
苦笑いでそれに引きずられている柿丸がチラリと車の後部座席を見たから、親父も釣られた。
「おいおい、おいおいおいおい。快衣、もしかしてお前の子か?」
友松屋の親父は柿丸の腕をあっさりと離し、スタタタタと雪駄を鳴らしたかと思うと、アズとシオンが座ったままでいるスポーツカーの後部座席を覗き込んだ。
「おいおい快衣。まさかとは思うが‥」
柿丸は既に、暗い店内の椅子に座っている。
「親父さん。まさかじゃ無くて、小豆と詩音ですよ。松茸、炭で焼いて下さいよ」
「小豆ちゃんと詩音ちゃんなのか!」
「感激の再開に時間が掛かるんだったら、車は置いて行きます。ビール、勝手にとりますよ」
椅子から立った柿丸だが、はなからビールが飲みたかったのがバレバレの腰の軽さである。
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