太陽の翼

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「間違いない。柳君と谷口君にそっくりだ」 「ああ‥‥何と無く‥記憶がある」 車を降りたアズは出鱈目に喜んでいる親父に肩を叩かれ、戸惑い顔のシオンは親父に頭を撫でられた。 「良し快衣、今日の店は貸切だ。沢山飲んで沢山食べて行け」 「そうゆっくりもして居られませんけどね」 「馬鹿をいうな馬鹿を。どうせまた忘れた頃にしか現れないんだったら、その分食ってその分飲んで行け」 柿丸がグラスにビールを注ぐテーブルの前を、親父はスタスタと通り過ぎ、カウンターの中に入るとパンパンと手を叩いてまな板を出してガスに火をつける。 「突然の事だったからな。先輩達もフィルタリング解除の余裕は無かったんだろう。2人ともブレスレットを貸して」 柿丸はビールを飲み干したグラスを置くと、テーブルの前に立ったアズとシオンにその手を出した。 「フィルタリング‥ですか」 所々ボヤけた父の記憶。 アズとシオンはブレスレットを柿丸へ渡した。 それを受け取った柿丸は、自分の左手首の同型からピン状の金具を抜き取り、まずはアズの銀色に差した。 立体的に現れた文字の羅列を柿丸は指先でなぞり、Enterキーに触れるとピンを抜き銀色をアズへ放る。 「どうなのさ!」 ブレスレットを顔の前で掴んだアズの脳裏から、スウッとモヤの様な物がとれた。 「柿丸さんありがとう。けれども何故なんです? フィルタリングを解除した今も、貴方は父の記憶にブロックされたままだ」 シオンのブレスレットの操作も終えた柿丸は、再びビールをグラスへ注いでいる。
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