太陽の翼

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サフス兵がまた居た。 地下鉄の入り口らしき場所で柿丸に敬礼をして、アズとシオンとは目を合わせない。 自転車でその場を通りかかった下士官が、慌てて自転車を降りると柿丸に走り寄って何かを耳打ちする。 柿丸はアズを見ながら、その下士官に耳を傾けた。 《中佐、お見事です。ナチュラル2人をドーマまで連れて来るなんて。おっと、大事な要件です。ロブロ少佐の身柄を確保しました。西東京飛行場へ身柄を移送中との事です》 アズとシオンには、会話が筒抜けである。 下士官はナチュラルの何たるかを知らない。 《中佐のお車は、取り敢えず宿舎の駐車場へ止めました。いよいよですね。ドキドキしますよ。アデュム作戦が終わったら約束通りあの車、貸して下さいね。それもドキドキします》 下士官が約束の返事を待つ隣で、柿丸はまだアズを見ている。 「少尉。俺が無事に生き延びて、貴様が無事に生き延びていたら貸してやる。電気代は自分持ちだがな」 漸く柿丸の視点が動いた。 腕時計の針が正午を指したのを確認した。 「よし、少尉。ラムダを見せてやる。そしてナチュラルをもだ」 ついて来いと言うのだろう。 柿丸がまた、アズとシオンに背中を見せた。
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