太陽の翼

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重い石の扉の先は、横幅のある廊下。20m程先に、また扉が見える。 「アズ、何も話すなよ。お前達の為にならない」 「‥‥‥‥」 柿丸はヴィト・ヒンの襟をつかみながら進む。 右側の白い壁。 (‥‥‥‥動いた?) アズの目線とほぼ同じ高さの白い色が、むにゅっと影を作った。 「アズ‥」 シオンもそれに気が付いたらしい。 アズの上着の裾を掴んだ。 「喋るな!」 柿丸は不機嫌なまま進んで行く。 《裏切り者柿丸‥のうのうとまた此所を訪れたか》 (な、何だ!) 白いむにゅっとしたモノはその凹凸をはっきりとさせると、黄色い目を剥き赤い口を開いた。 《おや、これは珍しい。新顔のそれもまた若いナチュラルだ》 《ほう、どれどれ。本当だ! 頼もしい若さじゃないか》 白い天井にも人の顔。 シオンは堪らずにアズの腕を握った。 《それよりもアイツは何だ? まさかサフスの人間じゃないだろな?》 左の壁にも顔。合計3つの顔は、どうやら外部からの侵入者を見張る役目であるらしい。 《ん! 間違いない。サフスの人間だ!》 右の壁。 《止めろ! 魂を吸い取れ!》 天井の口。 《いや、ダメだ。コイツはラムダに認められている》 「へっへ」 薄ら笑いのヴイト・ヒンの襟を掴んだまま、柿丸は既に2つ目の扉を開けている。
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