太陽の翼

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2つ目の扉は、左右に開く鉄の扉。 その直ぐ先に、灰色のシャッター。 《おや? よく見れば何だか懐かしい顔だねえ》 左側の顔が2つ目の扉の近くまで移動して、アズを見上げている。 《ああ。柳雪也の息子だね。似ている似ている。柳の息子だ》 真っ白い顔だから表情は分からないが、声を弾ませたその人は笑っているとアズは感じた。 ガサッと音がした。 アズの右手とアズにしがみ付いたシオンの左肘に提げられている紙袋どうしが擦れた音。 《ふむ? 懐かしい名前の後には懐かしい匂いがしてきたぞ》 今度は右側の顔がするすると近付いてくる。 《友松屋の牛丼だろう? お前はこの場になっても食い意地がはっているな》 天井からの声。 「アズ、何をしている。来い!」 柿丸がシャッターのスイッチを押したらしく、灰色のそれはガラガラと音を立ててローラーに巻き上げられていく。 アズは2つの紙袋を廊下の隅にそっと置いて、シオンの手をとった。 《無茶はするなよ》 《そうだ。無茶はするな》 シオンは後ろを振り向いたけれども、アズは前を向いたまま左手を少しだけ上げた。
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