太陽の翼

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「アズ、シオン。無鉄砲で頑固を貫き通すつもりなら、俺について来るがいい。けれども解れよ。ワガママはいけない」 低く冷たい言葉を発した柿丸はサフス軍のコートの裾を翻して、大股でヴィト・ヒンを追った。 《ザ──ツ。403部隊のツポイラ地区占拠完了を確認》 《ザ──ツ。217部隊のデオッセ方面作戦はキラン軍の予想外の抵抗に合っている》 《ザ──ツ。デオッセには予備隊の510を回した。他には?》 柿丸の左耳。軍事回線からの思考波は、この場所へ筒抜けである。 「アデュム作戦‥‥ただの軍事侵攻じゃないか」 15年前の大地のエグれは、8割方がキラン領土で起きた。自然、人々の暮らしは貧しいものとなったがサフスとの力の均衡を保つためにキランの民は無理を重ねて来た。 サフスタワーからキランの領土へ届き出した思考波は今、血と涙を流して来た社会の歪(ひずみ)に入り込み、無形であった不満を反政府運動という有形のものへ変えさせた。 アデュムという作戦はキランの人の心に入り込み、次に大量の兵器と兵士をその地に送り込もうとしている。 「アズ君!」 柿丸を追おうとしたアズを止める白衣が1人。 「子供のやるべき事じゃないよ」 白衣の男の靴底は、コンクリートの床との間に若干の隙間がある。 (実体型のフォログラフィー?) アズは喉の奥から、何やら苦いモノがこみ上げてくるのを感じた。
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