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「だ、誰の声?」
慌てて飛び退いたシオンはアズの後ろへ。
「ひやっ! ドーマのコアの声だ。僕にも聞こえたぞ。ひやっ、最高の気分だ」
ヴィト・ヒンが恍惚の表情でドーマへ手を伸ばすと、漆黒の鼻先、キャノピーらしき場所に赤のラインが走る。
(この感じ‥‥まさか!)
アズが感じたのはラムダの赤いイメージ。その光の中に浮かび上がる長い髪の人影。
(まさかだよ‥‥太陽の翼は‥太陽の翼は、誰の為の翼なのさ!)
ドーマのキャノピーもまた、白い煙を八方に吹き出して上に開く。
コクピットの真横から伸縮式のタラップがスルスルと下界に降りてくると、その人影はドーマのコアシートで立ち上がった。
煙をかき分けて届いた陽光が、その顔を照らす。
「キャ────ッ」
気を失い倒れかけたシオンを抱きとめ、アズはドーマの上に立つ人を睨みつけた。
「似てはいるがシオンでも無い、ニイフ・キーでも無い。柿丸サン、あれは誰なんです!」
「さぁな。俺なんかに分かるかよ。ところでアズ、お前とはここでお別れだ」
「えっ?」
「ドーマを起こしてくれた礼だ。俺の記憶でも覗いて来い!」
柿丸は素早く外したブレスレットをアズのこめかみに押し付けた。
太陽の光は更に眩しく、猛烈な風が地上へ向けて渦を巻いた。
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