新月号

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ドーマが飛び去った地下空間は嘘のように静寂である。 照明が1つづつ消えてゆく中、上から垂れ落ちているケーブルだけはゆらゆらとしている。 白服達の姿も今は見えず、元々が嘘臭いこの場所は更に白々しい。 アズが叩きつけられた壁で光るのはB7の文字。 「エレベーター? 動くのか?」 アズは気を失ったままのシオンを背負い、そのボタンを押した。 「父さん‥‥深く考えるなと言うならそうするよ。僕が今出来る事と言ったら、ロブロ・ゼッタとニイフ・キーを助ける事だ」 B8‥‥‥B9‥‥‥B10 (よし、動く!) シオンに似たニイフ・キーの波長は徐々に近づいて来る。移動の方向を考えると、横浜方面に身柄を移送されている可能性が強い。 B12の文字が点滅してエレベーターのドアが開く。 「アズ‥‥またお節介って言われるから‥‥」 「はは、駄目かい?」 シオンが首を横に降ったのが分かる。 「アズの好きなようになさい」 少年はシオンを背負ったままエレベーターに飛び乗った。
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