新月号

4/19
前へ
/300ページ
次へ
小道の先は、石の階段である。段々の石が所々が斜めに沈み、膝位の高さの枯れ草が、風にゆらゆらと揺れている。 「アズ、この階段は自分で登りたい」 シオンはアズの背中から降りた。 「友松屋からの帰りは、何時もこの道だったからね」 アズが見上げた空には、気持ち良く陽光をはね返す白い練習機の記憶。 「ところで、ロブロ少佐を助けるってどういう事なんだい」 階段を途中まで駆け上がっていた兵士がその点に気が付いた。 「少佐はね、僕達を守る為に新型機に落とされたんです。このままだと軍事裁判でしょう? 良い人なんだ。だから助けなきゃ」 アズは兵士に追いつき、追いつかれた兵士はアズと並んで階段を登る。 「軍事裁判なんて駄目だよ。少佐はサフスの希望なんだ。次の選挙に少佐が立候補したら、私は彼に投票すると決めているんだ」 「空飛ぶ政治家ですか」 「そう。空飛ぶ政治家だ」 重い翼だ。アズは思った。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

97人が本棚に入れています
本棚に追加