新月号

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「そもそもだよ。サトゥーマ議長の目指す世界が我々軍人には分からないんだよ。アデュム作戦なんてキランと交わした思考波協定に明らかに抵触してるし、弾丸が飛び交う場所に立つのは議会議員じゃなくて私たち軍人なんだ」 長い階段を登りながら、若い兵士の長い演説は続く。 「不慮の事故で他界したゼッタ少佐の父親、ジョセフ・ゼッタの考えに私は共感するものがあるんだ。人々は斥力などは捨て、暮らしは多少不便になるけども、自然エネルギーだけを頼りに細々としていても大地に足をついた暮らしをしなければならない」 (たしかメロウナ・チューリップも似た話をしていた‥‥) 階段を登りきったアズの前に現れたのは、4階建の白い宿舎。 「あはは、いっぱいの思い出を感じる」 「うん。父さん達の沢山の思い出を感じる‥‥」 「ゼッタ少佐の自然の党には頑張って欲しいんだ。新物質なんて、それを扱う事ができる一握りの人にしか利益をもたらさないと私は思うんだよ‥ちよっ、おい君達、待ちなさい!」 アズとシオンは駆け出している。 柿丸快衣の赤い車が止めてある。
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