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「おいお前達、これは何の真似だ!」
ライフルを抑えた方の軍服がアズを捉えに掛かるが、彼の視界は今、現実と過去を区別し切れてはいない。
「ロブロ・ゼッタとニイフ・キーは連れて行きます。軍法会議とかにかけさせる訳にはいかない!」
伸ばされた軍服の手をすり抜け、めくれたアスファルトの塊に少々躓いたけれどもアズは走る。
その背中に、もう1人の軍服が構え直したライフルは向けられたのだが、その銃口はシオンのセミオートマから撃ち出された弾丸に弾かれた。
──「おいおい、その喧嘩ちょっと待った」
「へ? ちょ、ちょっと」
軍用車から降りて来た3人目の軍服は、何故かロブロ・ゼッタである。
自由な手足を伸ばして背伸びをして、明らかに寝起きの顔をしている。
「よう、ヤナギ・アズ。ドーマには乗せられずに済んだようだな。でもあれだぜ、この記憶、ヤナギ・ユキヤはお前に見せたくなかったんじゃないか?」
ロブロはそう言って、自分の頭を人差し指で突ついた。
シオンもアズの側に立って、この場所の今が過去に溶けてゆく。
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