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『主幹、なぜ新月号を出してしまったんです! 第2次帰還船はおそらくサフスとキラン、両方からの斥力砲に軌道を変えられ続けている。無茶だし危険過ぎる』
狭く暗い管制室の奥まった場所へ、柿丸は言葉を吐き捨てた。
『柿丸快衣、キラン人をここへ入れたのか?』
『彼女だって関係者のはずだ』
入口のドアの脇に立ったままのアルミナ・ジャーンを振り返った後、柿丸は正面のスクリーンに映し出される新月号の座標を確認した。
大気圏脱出の角度も速度も、本来予定されている数値とは違っている。
『新月号とナチュラルだよ。莫大な労力をつぎ込んだこの2つにはそれなりの活躍をしてもらわないとならない。それとラムダだ。柿丸快衣、君はラムダをどれ位知っている?』
『そ、それは‥』
『第3物質ラムダ。大気との摩擦熱で燃え尽きるとは思えん。それがそのまま地表の下の第1物質クリルの層を貫くとすればどうなる?』
《ザ──ツ、こちら新月号。近付いて来るブレーンシップがある。確認してくれ》
ヤナギ・ユキヤの声である。
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