アルミナ・ジャーン空挺団

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  ロングコートの女、パイロットシートの上に立ち、右足を機首の円錐形に乗せ、背筋を伸ばして腕を組んでいる。 なかなかアズから視線を逸らさない。 「ローズマリーは逃がしたんじゃなくて、逃げられた」 アズは月を見たまま、不機嫌そうにボソリと答えた。 ガジャラと呼ばれた毛皮は、少し離れた場所の黄色い羽根の上に登り、それのパイロットのクリクリ頭にげんこつをくれている。 「ジャーン様、誰?」 女の立っている後ろの方、コクピットの中から子供の声である。 「フラワー、あいつ等はF体か?」 「違う。ギスギスしてない」 「そうかい」 女は飛んだ。 ロングコートをバサリとさせて着地して、ツカツカツカと歩いた。 細身のサーベルを腰に差している。 月を見たままのアズの前で止まると、グイッと顔をアズに近付けて、怒った顔のまま離れる。 「逃げられたという言葉、信じよう。アルミナ・ジャーン空挺団総帥、アルミナ・ジャーンだ」 アズも聞いた事のある名の知れた空賊。 ジャーンはそれを言うと暫く黙り、アズも同じように黙っていたが、シオンに袖を引かれた拍子に、月を見ながら考えていた事が口からポロリと転がり出た。 「ジャーンさん、その黄色いブレーンシップ、もらえません?」 もう。  
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