新月号

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『新月号に近付いて来るブレーンシップはサフスのローズマリーです。1時間前に此処を飛び立ったローズマリー2機が、高高度で待機していた可能性があります』 新月号のナビゲーターが意外といった表情で主幹を振り返ったが、ブレーンシップは通常、レーダーには感知されない。 『サトゥーマ・ゼアンネは帰国途中だろう? 何のつもりだ?』 そう。突然の帰国命令により、サトゥーマ・ゼアンネは霧雨の中、西東京飛行場を飛び立っている。 『主幹、駄目です! ローズマリーから離れるように新月号へ指示を出して下さい! ヤナギ先輩達にサトゥーマ・ゼアンネから離れるように早く指示を!』 柿丸が叫んでいる間に、スクリーンの新月号の赤い丸にはローズマリー2機の青い丸が重なっている。 《ザ──ツ。こちら新月号ヤナギだ。司令部。ローズマリーへ新月の護衛依頼を出したって話は本当なのか? どうなんだ?》 『そんな馬鹿な話があるもんか! 通信師イアーノウを貸せ!』 柿丸は飛び上がり、机2つを乗り越えて通信師のヘッドホンを無理矢理に取り上げた。 『先輩! アンタはどこまでお人好しなんだ! サトゥーマはラムダが欲しいだけなんだ! 頼むから限界まで加速して! 俺の事は何発殴っても良いから。お願いだから加速してくれ──────』 柿丸は絶叫したのだが、新月号は答えない。 スクリーンの赤い丸印は消えて、それと入れ替わったのはLOSTの赤い文字である。
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