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「ロブロ・ゼッタ。僕達は行きます。ドーマを追い掛けなくちゃならない。シオン、行けるかい?」
アズはシオンの肩に置いた手に力を入れた。
シオンはその小さな唇に力を入れる事で、その問いに答えた。
頷いたアズが、次にチラリと座り込んでいる兵士2人を見たから、ロブロはそこにある小さな誤解を解かねばならない。
「ヤナギ・アズ、少し心配をかけてしまったようだけど、あいつらは俺の後輩なんだ。横浜港に係留してある斥力船で、俺とニイフを本国へ逃がそうとしてくれている」
「へ、逃がす? そして横浜港へ行く‥‥‥」
第2湾岸線はとても自動車が走れる状況ではなくなっている。
アズがこれでもかという位に、アスファルトを剥がしてしまったから。
「大丈夫だ。此処まで来ればそう遠くはない。そして俺達は、この後は確実にしっかりと歩いて行かなければならない。サフスの間違いはサフス人が正さなければならない」
ニイフ・キーも、もう泣いてはいない。
細い足には、いつの間にだか力が入っている。
「少佐、まさかあれが‥‥」
軍服の1人が、海を見ながら立ち上がった。
「そう、あれが太陽の翼だ。次元のハザマにまで羽ばたこうとする機体だ」
新月号はその鼻先で波をかき分けている。
「デカイですね‥‥」
もう1人の軍服が立ち上がった時には、アズはもうシオンの手をとって駆け出している。
駆け出したら‥‥そう、振り向きもしない。
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