ガギガギの塔

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真夜中を少し過ぎた時間である。 キランの首都キラネグには粉雪が舞っている。 今も使われている前時代の宮殿の長い廊下を、陸軍中将ギルネ・ザザは観察部首席ラスカ・ラスカを従えて歩いている。 そのまた斜め後ろを異能体らしき若者が歩いていて、歩幅を少し広げたかと思うとラスカ・ラスカの耳に顔を近づけた。 「今朝から続いているキランタワーからの異音、若干ですが強くなっています」 「‥‥‥」 狐顔の女は、その言葉に表情を変えず、尖った顎をツンと前に向けたまま進む。 キラン共和国は、大別して3つに分けられる軍閥が主導する国家連合である。強行、中道、穏健の3派。 サフスタワーの完全稼働以来続く反政府運動を収束させる為に、穏健派の実質上の指導者ギルネ・ザザは、この長い廊下を歩いている。 廊下の行き着く先には、中道派の最高顧問、元帥ゼゼ・ヒスが待っているはずである。 「斥力の崩壊。キランタワーで起きた事象がサフスタワーでは起きないという事はない。ラムダを積んだ舟も地球に帰って来る。ゼゼ様にもそろそろ、重い腰を上げてもらわねばならない」 ギルネ・ザザのその言葉にも、ラスカ・ラスカは顎の角度を変えない。 強行派の持つ斥力砲スカラは、その発射準備を既に整えたとの報が入っている。 その砲口はサフスタワーにも向ける事が出来るし、太陽の翼の帰還船にも向ける事が出来る。 反政府組織を援護する目的でキラン国内に展開を始めたサフス部隊にも当然向ける事ができ、反政府組織そのもに狙いを定めることも、或いは可能である。
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