ガギガギの塔

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ゼゼ・ヒスの執務室のドアは質素で薄い。 彼が大将の階位で仕事場をここへ移した時に、元からあった金で装飾された重い扉から現在の軽いそれに入れ替えたらしい。 これもまた何の装飾もない机と椅子である。 ゼゼ・ヒスは深夜の来訪者達を温厚な白髯(はくぜん)の顔で迎えた。 「ヒス閣下、我々はまた大いなる悲劇に直面しようとしています。それを避けるためにも、私の考えに賛同をして頂きたいのです」 ギルネ・ザザは、年の差が20を超える陸軍最高顧問を前にして背筋を伸ばした。 「君からの書簡は読んだよ。本筋は確かにその通りだ。けれどもイカんのだよ。サフスの反サトゥーマ派と手を組むと言っても、彼らの基盤はもろいと聞く。我が国の反政府組織の要求をある程度認める事は、軍の弱体化を意味する。斥力砲スカラの破壊に到っては、内戦の始まりを意味するし、今現在のサフスに全面攻勢を重い止まらせているのは、紛れも無く、そう、紛れも無くスカラの存在だからね」 ゼゼ・ヒスは手のひらをソファーに向けてギルネ・ザザに着席を促し、机の2番目の引き出しから葉巻のケースを取り出すと、ペーパナイフで上等な煙の吸い口を作ったカリブ海産の1本を手に持ち、ドア近くで直立した姿勢のままでいるラスカ・ラスカを手招きした。 ギルネ・ザザは一礼の後ソファーに腰を落ち着け、ラスカ・ラスカは顎を上げたまま、葉巻の方へ進んだ。
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