ガギガギの塔

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《ザ──ツ、こちらアルミナ・ジャーン空挺団期待の新人001AA。ラスカさんオメガ組は待ちくたびれの限界ですよ》 ラスカ・ラスカへの通信を執務室にある軍事用のイアーノウが拾う。 「おや?」 ゼゼ・ヒスは小首を傾げながらもラスカに葉巻を差し出し、それをギルネ・ザザへ渡せという仕草をした。 「‥‥‥」 左耳で緑色に点滅するイアーノウの電源をそのままにして、ラスカ・ラスカは葉巻を受け取ると、それをソファーに座り足を組むギルネ・ザザへ渡した。 《ザ──ツ。日本海のドゴンゴからは分かった。東京からラムダの塊が飛び立っている。そしてたった今、もう1つのラムダを感じた。気に入らねぇがナチュラルの奴らは元気らしい。中道派の元帥サンとやらの説得はどうなんです? EEとジャゲポーの飛行母船も随分とスカラに近付いているはずだ。ザ──ツ》 ラスカから葉巻を受け取ったザザは、ソファーテーブルの上のマッチを使いそれに火をつけた。 大きく息を吸い吐き出す。 上等な煙が質素な執務室の天井へゆっくりと昇る。 「閣下。キランもサフスも再びのワガママには耐えられません。そして我々には時間がありません。そろそろ軍閥の垣根を超えて民衆に歩み寄り、悲劇の再現だけは、私はくい止めたいと思います」 「‥‥‥」 ゼゼ・ヒスは自分のぶんの葉巻を持って立ち上がった。 ソファーの前まで歩き、ザザと同じようにして、それに火をつけた。 「中将。自信はあるのか?」 「自負はありますよ」 上等な煙がまた1筋。 「中央の3軍の指揮権をお前に移譲しよう。大切に使え」 それを聞いたラスカ・ラスカは一礼の後、素早く執務室を後にした。 顎はもう上げてはいない。
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