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───そしてサフスタワーである。
北の大陸の山脈。それを形成する3000m級の山の頂に建てられた6000mの白亜の塔である。
噂によると200人を超える異能体が20tのクリルを制御しているらしい。
強風と自重に耐える事にも斥力は用いられているが、初冬のこの時期には強い風に構造体の鉄骨が軋んで、基礎から4000mにあるサトゥーマ・ゼアンネ居住施設の中でさえ、ガギガキガギガキという音が聞こえる。
居住施設の真下には、サフス連合議会議長専用のブレーンシップドックがある。
つい5分ほど前にそこへ入った青のローズマリーから降りて来るのが、サトゥーマ・ゼアンネである。
「どうやらアデュム作戦も順調に進んでいる。運命の時間は、より木星に近い場所で迎えなければならない。だろうフェイス?」
タラップを降りる途中で、サトゥーマ・ゼアンネは上を向いた。
よれた長髪の白い髪、琥珀色の瞳。70歳を超えた風貌であるが、戸籍上の年齢はそれよりも20以上は若い。
「議長。結局のところどうなんです? ラムダの声如何では、僕の事も捨てるんでしょう? ヴィトみたいに」
「お前の事は捨てやしない。ヴィト・ヒンだって捨ててはいない」
コアシートで下を見下ろしているのは、サトゥーマ側近のフェイスと呼ばれている異能体である。
髪の色が緑であるから、1日の半分はアコーサの溶液の中に住んでいる。
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