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「バカ、何言ってるの!」
アズはシオンに袖を引かれたけど、更に半歩進んで、アルミナ・ジャーンに顔を近付けた。
子供が、母親にキャンディーをせがむような顔をしている。
「おやおや。おーい。ガジャラ、ロマァ、こっちに来な! 面白い日本人を見せてやる」
アルミナジャーンは、あまりにもアズの顔が近付いたから、体を反らして後ろを向いた。
赤い唇の下、右側の顎に大きめのホクロ。
「ジャーン様どうしやした?」
小柄の男の襟を掴んでくるのが、毛皮の袖無しガジャラ。
「ジャーン様、暴力はいけませんて暴力は」
ガジャラに引きずられている小柄な眼鏡がロマァ。
ロマァはずれた眼鏡を直し、ガジャラの手を振りほどいた。
「日本人、イアーノウを付けてないですね」
イアーノウは前述したが、人工的な思考派を送受信する、左耳に付ける小型の機械。
「ロマァ、学者様が聞いて呆れる。電波塔が無いこんな田舎で、軍事回線以外の思考派が飛ぶのかい?」
「ああ、なるほど。なら随分とキラン語の上手い日本人だ」
「このとんちんかんめ。イアーノウ無しで思考派を飛ばせるのは?」
夜露の草に座っているロマァは、首を傾げた。
「上質のF体か、噂のナチュラル?」
「ご名答だ」
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