ガギガギの塔

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「議長、少々な異変を思考波レーダーが感知しました」 「異変だと? 上で聞こう」 ドックの中には5人の女がいて、全員が灰色の軍服を着ている。 サフスタワーは建前上民間の建造物であるが、実質は紛れもない軍事施設である。 カンカンカンと音をたて、サトゥーマ・ゼアンネは螺旋の階段を上へ登る。 それについて階段を登る5人の軍服は、努めて心を白くしている。 〈サトゥーマ・ゼアンネは人の心を読む〉 サフスでは誰もが信じている事柄である。 日本から帰国したサトゥーマは政界に進み、僅か10年で世界の2/3の版図を持つサフス連合の頂点に進み半独裁という地位を築いた。政敵とされた人物は全て、不慮の事故死を遂げている。 ロブロ・ゼッタの父、ジョセフ・ゼッタもその中の1人である。 「ふん、好い気なモンさ」 誰も居なくなったドックである。 異能体フェイスは青のローズマリーのコクピットから身を翻し、タラップに足を1度だけかけるとまた飛んで鉄の床にフワリと降りた。 「ぐらついているんだよ。この床もサフスも」 そして階段へ進んだ。
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