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「シオン、自力で第3次帰還船を探さなきゃいけない。大丈夫?」
アズは飛び乗ったパイロットシートの操作盤の右下にラムダナイフを差し込んだ。
様々なパネルがオレンジに発光して、長細いキャノピーが油圧を抜かれて降りてくる。
「あのねアズ、一体何百時間の訓練をして来たと思うの?」
コアシート前のパネルに、シオンは気ぜわしく両手の指を触れさせている。
立体的な座標軸と数式。
赤い点、青い点、そして緑の点。それ等が一定の秩序を持って球体の周りで運動を始めると、シオンはシートの両脇から白いコードのついたイヤホン状の物を伸ばして左右のこめかみに押しつけた。
「どう? 行ける?」
「アズ、あなたシツコイ」
「チェッ!」
キャノピーが完全に閉じられると、コクピット内の空調機が働き始め、全てのパネルが前から順番に緑色に変わっていく。
「シオン、オールグリーンだ。こちらは行ける!」
操縦桿は1本、フットペダルは4つ。
右の手を何度か開いて閉じて、そのやや短めの操縦桿をアズはガシッと掴んだ。
「いつでも行っちゃって。方角はあなたの頭に矢印で送ったげる」
「良し!」
コクピットの中の空気の流れが変わった。
ラムダの斥力が、ここでも小さな渦を巻き始めた。
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