ガギガギの塔

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翼長が50m近いW型の翼である。 その純白の表面を、赤のラインが生き物の如くに動く。 ラムダである。 シオンの思考波の仲介を受けて、この宇宙と重なる別宇宙から斥力を引きずり出している。 海面が大きく下へ押し下げられて、少し離れた小高い丘の常緑樹の枝までもが揺らされている。 次元の狭間の帯はブレーンと呼ばれる。 言い換えれば、ブレーンシップとは空間の狭間を飛翔するのだ。 「ドーマを感じた。帰還船と並走しているわ。横取りする?」 「あのさ、帰還船てのは元々は新月号の物だから。新月号はドーマと帰還船の間に割って入る!」 首を下げた姿勢で新月が垂直に浮かび上がると、アズは操縦桿を胸に近付け、1番右側のフットペダルを深く踏む。 新月は回転を加えながら、ゆっくりと首をもたげた。 そろそろ太陽は西に傾き始める時間。 「地球半周の間で決着をつける」 「了解!」 アズはフットペダルを、更に深く踏んだ。
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