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アズはパイロットシートの右脇にあるアクリル製の板を叩き割った。
ラムダの解放。
確かにそう言った。
板を割られたスイッチボックスの中の赤いボタンを、アズの親指がガチリと押す。
《ザ──ツ。こちらドーマ、柿丸だ。第3次帰還船を回収した。今から大気圏再突入の準備に入る。ザ──ツ》
「このタイミングかよ!」
柿丸の思考波の直後には、新月の上下左右からはミサイルの雨。
そして加速を続ける新月号の翼の赤のラインの動きが激しくなる。
W型の翼の中だけで動いていた赤のラインは、いつの間にか白い機体の全てで蛇行を始める。
ミサイルがもうすぐ新月号を捉えようとする頃には、ラムダはその動きの場所を機体の外にも求め出した。
赤のラインはそれ自体が意思を持つ生物の如くに大気の中を走り、鎌首をもたげると直ぐにミサイルを獲物であると判断した。
10本を超える赤の動体が、次々とミサイルに喰らい付く。
爆音と炎、そして閃光。
新月号は海面すれすれの高度で東へ飛ぶ。
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