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衛生軌道上で、第3次帰還船を腹に収めたドーマのコクピットの中である。
メインシートに座る柿丸快衣は腰のベルトから拳銃を抜いた。
「ヴィト・ヒン。ありがとう、お別れだ」
引鉄を引く為に素早く後ろを向いた柿丸だが、銃口を向けるべき空軍少尉の顔が見えない。
視界全てが赤く染まり、体が薄いシーツでグルグル巻きにされた感じで身動きもとれない。
「ヴィト‥‥貴様‥何をした‥」
「ウエッ、中佐、それは僕の台詞ですよ。ウエッ、僕を拳銃で撃って、ウエッ、中佐は何をしようとしたんです? ウエッ」
柿丸の体を締め付けているのは、ヴィト・ヒンの口から這い出した赤い帯である。
ヴィトの胃袋の中にあったラムダが、柿丸の意識の何かを獲物と判断したのかもしれない。
「おそらく中佐はね、帰還船のラムダをこのドーマごと深い海の底にでも沈めたいのよ。中佐は元々ラムダが嫌い。私もだけど」
コアシートに座るドーマの異能体である。
赤い髪、赤い瞳。
ニイフ・キーを鏡に写した様な女。
ナチュラルになりきれなかった人である。
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