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「議長、サフスタワーが倒壊するというのは、どうやら事実の様です。4本の柱脚の斥力バランスが崩れています」
ソファーで目を閉じていたサトゥーマ・ゼアンネは、その言葉に琥珀色の瞳をギラリとさせた。
リビングに居るのは計6人。
サトゥーマ以外は3次元PCのフォログラフを指先で摘まんで、タワーの非常事態に対応している。
サトゥーマは立ち上がった。
ギラつく目を、窓際にいる銀縁眼鏡の女性兵士に向けた。
「機械に頼り過ぎだ。全てのエレベーターと、非常階段を閉鎖しろ。1番斥力の弱い柱脚はどれだ?」
「3番柱脚です」
サトゥーマの問いに銀縁眼鏡が答える。
「3番柱脚のコアルームから、F体の逃亡者が出ている筈だ」
サトゥーマのこの質問は、ソバカスのある女性兵士に向けられた。
「こちらからですと、4人の不在を確認できます」
サトゥーマ・ゼアンネはステッキを手にして立ち上がった。
ステッキの先で大理石の床を突きながら進んだ先は、赤い口紅の女性兵士のテーブルの前である。
「冬の雪山へ逃げてどうする? F体とは斥力を使う事以外に頭が回らんのか」
「き、救助の策を‥‥」
言葉を上手く発せられない兵士へのサトゥーマの答えは、ステッキの先で激しく床を叩く事である。
「余分な手が有るのなら、早急にそれを使って他の柱脚から3番柱脚へF体を補充させろ。非番のF体を叩き起こせ。近場の軍施設からF体を連れて来い。この大事な時に、お前達は無能過ぎる!」
(人非人‥‥)
「はん?」
サトゥーマの非情さに赤い口紅は心を白くする事を忘れ、サトゥーマ・ゼアンネのステッキの先は、彼女の細い首に押し付けられる。
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