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サトゥーマは、ステッキの先で女性兵士を椅子に座ったままの格好で壁に押し付けた。
「ラムダの声を聞くべき者が人非人である筈は無かろう? この世界は残るべき者の選別を始めているのだぞ。どうだ! お前、答えてみろ! 私が目を掛けてやっているというのに、その目は何だ! 下等だ、下等! 下等過ぎるぞ!」
サトゥーマの口の周りに出来た泡の塊が大理石の床に落ちたタイミングである。
塔がグラリと傾いた。
口紅の兵士が床へ崩れると、サトゥーマ・ゼアンネは手の甲で口の泡を拭った。
「フェイスは何処だ! フェイスは何処にいる!」
寵愛する異能体を探す。
「議長のローズマリーでスタンバイを終えています。タワーから逃げますか? 議長」
銀縁眼鏡の問いに、サトゥーマ・ゼアンネはニタリと笑った。
「非常事だ、その無礼な答えに銃を抜くのは止めておこう」
ドアノブに手を掛けた背中に、また別の声。
「私達も見捨てると?」
それに対しては、背中が少しだけ止まった。
ほんの少しだけ考えた。
「選ばれるのは、おそらく私1人だろうからなぁ」
サトゥーマはドアを潜り、ワガママな音をさせてそれを閉めた。
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