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「フェイス、フェイス、気が利くじゃないか。私のローズマリーはもう出せるのか?」
螺旋階段を駆け下りるサトゥーマの口には、また嫌らしい泡が溜まっている。
巨大な格納庫の扉がギシギシと上下に開き出すと、冷たい外気が一斉に格納庫へなだれ込んで来る。
サトゥーマが酸素マスクを使い出したのは階段の途中。
「出しますよ、直ぐにでもローズマリーは出します」
フェイスが微かに笑みを洩らしたのは、タワーが再び揺れた時である。
「予定とは違うがやむを得ん、運命の時は空で迎える」
───ズン───
サフスタワーがまた揺れた。
サトゥーマが足を掛けようとしたローズマリーのタラップが、何故だか徐々に離れて行く。
「何だと? 何だと! フェイス、おいフェイス止めろ! ローズマリーを止めるんだ!」
塔の僅かな傾きに、ローズマリーは素直に従った。カタパルトの上をゆっくりと滑って、夜明けまではまだ時間を有する暗闇に落ちて行く。
「なんて事だ‥‥」
サトゥーマが呆然と眺める暗闇から、雪の混じった突風が吹き込んで来る。
「のんびり歩いてるからさ。直ぐに出すって教えてあげたのに」
強い風はフェイスの緑色の髪も、ぐしゃぐしゃにしている。
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