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C337の人員輸送能力は50人程である。
計4機が人員の救助にあたっているが、その人達を避難させる事の出来る町まではある程度の距離がある。
《ザ──ツ。こちら第8航空隊のベネネイだ。新月号、手伝える事はあるか?》
ベネネイは小型のブレーンシップである。予備席を使っても3人の救助者しか運べない。
《ヘリポートが見える、そこで取り敢えず待機する》
「了解」
思考波を送った後、アズは小さな胸騒ぎを覚えた。
ベネネイは直様に着陸体制に入り、制御室より下にあるヘリポートへ垂直に降りて行く。
胸騒ぎは徐々に強さを増して、ベネネイがヘリポートに脚を着いた時には激しい鼓動を伴った。
サフスタワーは既に最頂部から崩壊を始めている。
たった今落ちて行った鉄骨を交わして、C337が麓の町を目指して行く。
胸騒ぎの理由。
「しまった!」
アズが叫んだ時には、ヘリポートに居た筈のベネネイが今度は垂直に上昇を始めている。
「サトゥーマ・ゼアンネ!」
ベネネイは加速しながら新月を掠め、そのすれ違い様には機銃を連射した。
タワーの柱脚からラムダのラインが伸びたが届かない。
《ザ──ツ。ドーマ応答しろ、こちらサトゥーマ・ゼアンネだ》
アズとシオンの記憶の中にある、嫌悪すべき声である。
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