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新物質とか斥力とか言っても地上の誰もがそれを知っている訳では無い。
イアーノウが1つしか無い南の島である。
波打ち際の岩の上では、島の若者が幼馴染の女の子にプロポーズをしたいらしい。
後ろで組んだ掌の中に、何ヶ月もかかって作った貝殻のネックレスを握っている。
愛情を言葉にしたいのだが、女の子の自分への気持ちに自信が無い。
岩に腰掛けた女の子も同じ。
若者がプロポーズをしてくれそうなのだが自信が無い。
波が岩場に打ち寄せる度に、互いが言葉を期待して、ヒヤヒヤしている。
ドーマは突然に火を吹いた。
黒い機体を赤いラムダが包んでいる。
火花が白く弾けた後は、右の黒い翼が千切れ、間髪を入れずに左の翼も宙に舞った。
尻尾が折れ胴体が粉々になると、腹に抱えられていた第3次帰還船は、夜の闇へ放り出された。
ドーマに食らいついていた2機のオメガは、落ちて行く帰還船と幾度も交差して、積んでいた全ての砲弾を無人の帰還船へ撃ち込んだ。
帰還船の中のラムダは細かな粒子となって拡散し、気流に乗る。
粒子を避けて上昇した2機のオメガは、納得の旋回を右と左に分けて行った。
加速を繰り返す。
陽が昇ろうとしている場所へ、戻らなければならない。
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